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エンジニアと社会課題をつなぐ、“カケハシ”としてのDevRel。

テック系大手にはじまり、最近ではスタートアップでの取り組みも見られるようになってきた「Developer Relations」(DevRel)。エンジニアコミュニティにおける自社の技術ブランディングや、それに伴う社内外のエンジニアとの関係構築、さらにはエンジニアがベストパフォーマンスで働けるような社内施策、環境づくりなど、エンジニアを対象とした幅広い活動を意味します。

カケハシも数年前に KAKEHASHI Tech Blog を立ち上げ、エンジニアの自主的な取り組みの一つとして、さまざまなアウトプットを続けてきました。

また、CTO湯前による公式noteの記事では「エンジニアコミュニティへの貢献」を宣言しています。

こうしたステップを経て、カケハシでも本格的に技術広報チームを組織し、DevRelに取り組んでいくことに。その活動を牽引するのが、この6月からカケハシの一員となったこの人、櫛井優介さん (@941 です。

櫛井さんといえば、長年にわたりLINE株式会社(現在はLINEヤフー株式会社)に所属し『YAPC::Asia』や『ISUCON』といった大規模なエンジニア向けイベントを運営しながら、さまざまなエンジニアコミュニティに参加しつつ、また自身のブログ 『941::blog』ではテック企業のオフィスツアー企画(行ってきたシリーズ)で多くの読者を得て……と、DevRelという名前がつく以前からDevRelに携わってきた、日本における第一人者のひとり。

正直、カケハシ社内の一部でも「え、あの櫛井さん?」とざわつきました。そして再認識しました。カケハシはDevRelに本気なんだなと。

そこで今回は、櫛井さん自身に、今回の転職とこれからのチャレンジについて語ってもらうことにしました。きっとそこから「カケハシならではのDevRelのあり方」が立ち上がってくるはず。エンジニアの方はもちろん、そうではない方も、ぜひご覧ください。

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櫛井優介 Yusuke Kushii
北海道留萌市出身の1979年生まれ。2000年にIT業界に飛び込み、Webディレクターとしてキャリアを積む。2008年頃からエンジニアサポート業務として会社の枠を超えてDevRel活動を続けている。趣味はイベント運営とPodcast配信とビリヤード。

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当事者になって初めて見えた、医療という社会課題の存在

櫛井:転職自体は、実は2〜3年ほど前から考えていたことなんです。ライブドアへの入社から数えると20年、今でいうDevRelを担当するようになって15年以上。たいていのことには土地勘ができましたし、ある程度やりきった感もありました。

また自分としては、いち企業の社員でありつつも常にオープンな気持ちで活動していたつもりでしたが、思いがけず「所属会社の中に閉じている」という指摘をいただいたこともあって。

新たな環境でDevRelの活動を継続し、さらに発展させることができるか、チャレンジしてみたいと考えるようになりました。

とはいえ、これまでと同じスタンスでDevRelにコストや時間をかけられる会社となると、選択肢は限られてきます。また仕事人生の後半戦は、より直接的に社会問題の解決に貢献したいという思いもあり、エージェントに相談しながら気長にタイミングを待っていたんです。

自分自身が難治性の病気を患ったのは、そんなさなかの出来事でした。いわゆる指定難病の一つです。予兆めいたものもなかったし、本当に突然のことでした。

治療環境のある病院も限られているためあちこちを回りましたし、何度も検査を繰り返したり、入院するとなってもベッドに空きがなかったり。自分自身が患者として医療を受ける当事者になったことで、初めて見えてきたものがたくさんありました。

長らくIT業界に身を置き、社会のプラットフォームとなるようなサービスにも関わってきましたが、入院の際に同室だった70代のガン患者さん、慌ただしく働く看護師さん……病院生活で目の当たりにした医療の現場は、デジタルが行き届いた社会とはほど遠いものでした。

テクノロジーが解決できていない医療体験のリアルな負の側面は、当事者にならなければ分からないままだったかもしれません。そんな経験があったあとに、相談先のエージェントから推してもらったのがカケハシでした。


“明日の医療”という壮大な目標と、地に足のついた事業・サービス

カケハシを知ったのは、そのときが初めてです。医療スタートアップとして、小さな成功ではなく、薬局向けの事業を入り口にこれからの日本の医療そのものの変革を目指していることに、まず好感をもちました。

さらに、サービス・プロダクトを開発・提供するだけにとどまらず、現在の医療を支えている医療機関や企業、公的機関などさまざまなステークホルダーと連携をとり、一緒により良いものをつくっていこうと実際に動き出している。

“明日の医療の基盤となる、エコシステムの実現”というビジョンが空想ではないこと、新たなプラットフォームの創造に向けて地に足のついた事業を進めていることに、いい意味で、イメージしていたテックスタートアップとの違いを感じました。

日本が抱えている社会課題はさまざまですが、なかでも医療をはじめとした社会保障の問題は特に無視できないテーマだと思っています。

超高齢化と少子化、縮小する経済のなかで、今のままの仕組みを維持することはできません。今回自分を支えてくれた医療制度は、このままだと負の遺産となって、子どもたちやその先の世代に引き継がれることになってしまいます。

そうならないようにするために、何か自分にできることがあるのだとしたら、残り半分近くになってきた仕事人生をそこにかけるのは、わりと自然なことのように思えました。

カケハシのチャレンジは、日本の医療をしなやかに、サステイナブルに変えていくことです。CEOの中川さんが「口にするのはかんたんだけど実際はとてつもなく厳しい山登り」と前置きしたうえで、「それでもやる」「誰かがやらなきゃいけない」と言い切っているのを見て、自分としても心動かされるところがありましたし、ピュアに同じ思いをもった人たちが集まっているところに、カケハシというチームの魅力と可能性を感じています。

カケハシには6つのバリューがあって、その1つめにあるのが「高潔」。志を高くしてそれを曲げない、裏表なく正しいと思う道をいく、といった姿勢を意味しているのですが、これが本気なんですよ。

中川さんが「これからの社会のためにならないことをやって成功するくらいなら、会社がつぶれたほうがマシ」と口癖のように言っていて、実際に現場でもその考えが浸透している。高潔はエンジニアコミュニティにも通じる部分がある気がして、自分も好きなバリューです。ビジョンや事業モデルとはまた違う観点で、高潔と言い切れるところにカケハシの可能性を感じたりもしています。


自分都合に閉じない「開かれたDevRel」を目指して

DevRelに対するカケハシのスタンスは、CTOの湯前さんがVPoE就任のときに書かれたこの記事がすべてといってもいいかもしれません。

エンジニアリングを事業のドライバーとする企業がDevRelをやること、エンジニアコミュニティに積極的に貢献すべき理由は、ここに書かれていることに尽きると思います。自分もまったく同じ考えです。

とはいえ、それなりにコストを必要とする活動です。スタートアップのこのフェーズでDevRelにアクセルを踏み込むのはちょっと早いのかな? と思うところもあって、どこまでやるのか? やれるのか? というのは気になっていました。

そこで端的に「カケハシの事業と直接的なつながりのないイベントやコミュニティにも関わっていきたいと思っているけど、どうですか?」と、直球で湯前さんに問いかけてみたんです。

秒で「まったく問題ないです」と返ってきました。むしろ、どんどんやってほしいと。

ちなみに入社してみて、その言葉に嘘はありませんでした。たとえば、カケハシはPython/TypeSript/AWSという環境でプロダクト開発をしていますが、今年の『JANOG54』というネットワーク構築のイベントにも参加していますし、これまでと変わらず、違和感なくやらせてもらっていることは言い添えておきたいと思います。


これからのDevRel、カケハシならではのDevRel

最後に、これからのことも。

カケハシでは「技術広報チーム」の一員として、今までどおりオープンなスタンスで、今まで以上にエンジニアとエンジニアコミュニティをサポートしていきます。

また、テックスタートアップとしてのカケハシが、エンジニアにとってもっと働きやすく、最高のパフォーマンスを発揮できる場所となるように尽力したいという思いも強くあります。こちらは、社内のエンジニア向けに外部講師を招いて勉強会をやったり、開発チーム横断のスプリントレビューの運営に携わったり、徐々に始めているところです。

さらに、カケハシ社内にも素敵なエンジニアがたくさんいます。彼らが社外の方々と接する機会をもっとつくっていきたいし、カケハシ内にたまっているノウハウもたくさんあるので、発信する場も増やしていきたい……

ざっくりまとめると、「社内外を問わずエンジニアの活躍のために何でもやる」ということになると思います。

久しぶりに新しい環境に飛び込んで改めて実感したのは、やっぱり自分は「エンジニアが好き」なんだなということです。新しい何かを生み出すことができる人たちというのは、みんな本当にすごいし、みんな本当におもしろくて。

そんな人たちがもっと気持ちよく仕事できるようになるために何ができるのかを考え、実行することで、エンジニアをサポートしつづけていくのが自分の仕事の軸であって、それはカケハシという新しい環境でもまったく変わらないスタンスです。

一つだけ、カケハシにきて変化したことがあるとしたら、「一人でも多くのエンジニアに、医療という社会課題の存在を知ってほしい」と考えるようになったことかもしれません。

テクノロジーによって医療体験はより良く変わっていくべきだし、エンジニアにはそれを実現する力があると思います。解決しなければならない課題の大きさ・複雑さや、ミッションの重みという点で、やりがいや手応えも十分にあると思います。

そこに気づいてもらうこと、医療というテーマとエンジニアとの結節点になることが、カケハシらしいDevRelのあり方なのかなと。

その観点でいうと、医療の世界をよりエンジニアフレンドリーにしていくことも必要ですよね。カケハシには、その役割も期待されていると思っています。

ということで、これからもオープンに活動していきますので、エンジニアの皆さん、イベント等でご一緒する皆さん、引き続きよろしくお願いします。そのなかで、医療課題の解決というミッションや、カケハシというチームに少しでも興味を持っていただけたら、ぜひお気軽にお声がけください!


聞き手:上田恭平(カケハシnote編集部)


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