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一人の“熱”から始まった、カケハシ恒例「薬科大・薬学部の全国行脚」

その名は、工藤知也。カケハシを代表する薬剤師メンバーの一人です。

実はカケハシ、全国の薬科大・大学薬学部にて、薬学生向けの出張講義を行なっているんです。2024年度は、現時点で全国10大学をまわる予定になっています。

「いち企業が、なぜそんなことを?」
「いったいどんな話をしているの?」

今回は、実際の講義の様子を交えながら、背景にある想いや“未来の薬剤師”とともに目指したい医療の姿について、広報の成田からお伝えしたいと思います!

工藤知也 / Tomoya Kudo
金沢大学大学院医学系研究科がん医科学専攻修了。ケンタッキー大学医学部博士研究員を経て、臨床への強い関心から調剤薬局へ。その後、中尾と出会い、医療の仕組みそのものにアプローチする仕事を志すようになりカケハシへ。現在は服薬指導コンテンツ制作チームのマネジメントを担うとともに、Musubiのデータの医学的・薬学的活用について研究・探索を続けている。

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ひとりの医療人として、後輩たちに伝えたいことがある

2024年7月。星薬科大学の4年生、約300名を前にマイクを握った工藤さん。

“ 医療人にとって「後輩を育てる」ことはとても重要な使命です。私も薬剤師の一人として薬学部の学生さんのお役に立つことがあればと思い、今日この場にやってきました。 ”

10年後、20年後……そのもっと先を見据えて、患者さんにとってより良い医療を提供しつづけていくには、医療従事者それぞれが知識やスキルを高めていくことはもちろん、そのバトンを次の世代へ受け渡していくことが大切。

カケハシの大学行脚は、工藤さんのこの思いからスタートしました。

プロダクト開発の経験から語られる、薬局DXの本質

今回の講義テーマはこちら。

医療人としての薬剤師 —— 医療デジタルトランスフォーメーション(DX)

創業以来、薬局DXを推進する複数のプロダクトを展開しているカケハシ。薬剤師としてプロダクトに関わってきた経験を踏まえ、DXにおいて重要なポイントは、顧客や社会のニーズをいかにとらえるかにある という工藤さん。

“ 「デジタル」や「データ」は顧客や社会のニーズをとらえるための手段にすぎません。逆に言えば、顧客や社会のニーズをとらえられなければ、それはDXではない、とさえ言えます。 ”

薬局DXの具体例として挙げられたのが、高血圧と診断された50歳の女性と、その女性に服薬指導を行う新人薬剤師とのやり取りについて。

(患者さんと薬剤師の間にある、あの独特の緊張感……)

薬剤師がお薬をお渡しする際に行なう服薬指導は、患者さんの性別や年齢、妊娠中かどうか、車を運転するか、喫煙習慣の有無など、患者さんそれぞれの状況に応じてお伝えする内容をアレンジすることが必要です。

経験の浅い薬剤師にとって、服薬指導はとても高いハードルです。説明すべきことをもれなく話せているだろうかと、不安でしょうがないはず。

そんなとき、処方せんや患者さんの情報をもとに最適な服薬指導の内容を提示してくれるシステムがあるとしたら? 薬剤師の不安をやわらげることはもちろん、患者さんへの説明の抜け漏れも防ぐことができるのではないでしょうか。

テクノロジーによって薬剤師の負担や不安が軽減し、薬剤師の業務そのものが最適化される。これがまさに服薬指導のDXです。

患者さん目線の薬局DX

では、患者さんの目線でみるとどうでしょう?

高血圧を指摘され、今まで飲んだことのないお薬を飲み始めることになった50歳の女性。体調の変化はもちろん、お薬の副作用を心配されているかもしれません。

どんな患者さんであれ、薬剤師は必ず服薬指導をし、薬剤情報提供書もお渡しします。しかし、その内容を本当に理解できている患者さんは、はたしてどれだけいるのでしょう? お薬を飲み始めて体調に変化があったとしても、それが副作用によるものなのか、患者さん自身で判断することすら難しいのです。

ここでもし、患者さんのスマートフォンに、処方に応じた確認事項が“薬局からの質問”として送られてくるアプリがあったらどうでしょう?

質問に対する患者さんの回答をもとに、システムが副作用の疑いを検知し、薬剤師が適切にフォローしていく。届いた質問に回答することは、患者さんご自身が自分の容態を把握することにもなりますし、それを薬剤師が見てくれているという安心感にもつながるでしょう。

テクノロジーによって患者さんの体験や薬剤師の関係がより良く変わっていく、これもまたDXの本質だと言えると思います。

薬局DXは薬剤師の敵なのか?

薬局DXの話題につきものなのが「この先、薬剤師の仕事がなくなっていくのでは……」という声。

工藤さんは強い口調で「全くそうは思いません」と言い切りました。むしろDXによって、薬剤師がより職能を発揮しやすい時代になるのだと。

社会人として薬局の現場に立つと、学校で学んだ知識を活かす機会はほとんどないと言われることもあります。しかし、DXが進めば進むほど、学生時代に培われた専門性と調剤の現場との距離は、もっともっと近づいていくのだと思うんです。

(未来の薬剤師を前に、一貫して薬剤師の明るい未来を語る工藤さん)

“未来の薬剤師たち”を待っている、可能性に満ちた時代

薬局DXの未来について、工藤さんは2つの可能性を紹介しました。

1つ目は、薬局業務の「品質」が可視化され、評価できるようになる未来です。

「自分の服薬指導は、他の薬剤師と比べて上手くできているほうなのだろうか?」「ハイレベルな服薬指導をしている薬剤師は、患者さんにどんな対応をしているのだろう?」

現状、薬剤師が自分の業務を定量化・相対化することは極めて難しく、この問いに明確に答えることのできる薬剤師は決して多くはないでしょう。このままでは、気づけば何十年間ずっと同じ服薬指導をしていました、ということになりかねません。

成長には“振り返り”が必要です。その振り返りの指標となりうるのが、「クオリティ・インディケーター(QI)」というものです。

「クオリティ・インディケーター(QI)」とは、医療の品質を評価するための定量的な指標のひとつ。医療の現場では、患者さんへの医療行為について疾患ごとに一定のガイドラインが定められており、そのガイドラインに沿った処置が施された患者さんの割合をスコア化したものが、「QI」です。

これまで「QI」の算出には、処方せんと薬歴(薬局におけるカルテのようなもの)を一件ずつ確認し、特定の薬が処方された患者さんの数や、 薬剤師による適切な服薬指導がなされた患者さんの数を手作業で抽出する……という非常に大変な作業が必要でした。

しかしこうした作業は、薬歴の電子化によって大きく効率化できる可能性があります。日常業務を通じて「QI」計測のためのデータを自動的に収集できるようになれば、業務を定量評価したり相対化したりして、改善を重ねていけるようになるはずです。


もう一つの可能性は、患者さん向けのアプリケーションの進化。

例えば、患者さんが薬の服用を始めてからの期間をモニタリングし、副作用が発生しやすいタイミングで「いま何を確認するのが最適か」を、システムが薬剤師に提案してくれたり……

テクノロジーと薬剤師のコラボレーションによって、より精度の高い医療を提供できるようになっていくでしょう。

「全国行脚」を、薬剤師とテクノロジーの結節点に

2023年、薬学教育モデル・コア・カリキュラムが改訂され、薬剤師として求められる基本的な資質・能力の中に、「情報・科学技術を活かす能力」が明記されました。薬学生にも、ITを活用して薬剤師の職能をさらに発揮できる人材となることが求められています。

講義の最後に、工藤さんは薬学生に向けてこんなメッセージを送りました。

“ 今日のお話で、薬局DXを具体的にイメージできるようになったでしょうか。そして、これからどんな面白い時代がやってくるのか、わくわくを感じられたでしょうか。

大学を卒業し、臨床の現場に出てからも、どんどん医療の質を上げていくことができる。そんな新しい時代が、みなさんを待っています。 ”


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テクノロジーを活用し、患者さんにとっても医療に携わるすべての人にとっても、よりよい医療のかたちを実現していくことがカケハシの使命。未来の薬剤師の背中を少しでも後押しできればとの思いで、今後も「全国行脚」をつづけていきます!

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