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プロダクト開発を支える薬剤師の想いと進化

はじめまして、薬剤師のドメインエキスパートチームに所属している工藤です。2018年入社後1年間はカスタマーサクセスを担当していました。その後、新規プロダクトのプロダクトマネージャーを経て、現在はドメインエキスパートチームのディレクターを担っています。今回はカケハシにおけるドメインエキスパートの役割についてご紹介します。

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工藤 知也 Tomoya Kudo
ドメインエキスパートチーム ディレクター/博士(医学)・薬剤師
2007年金沢大学大学院医学系研究科博士課程修了。ケンタッキー大学医学部にて寄生虫に対する生体防御のしくみを研究。米国で臨床薬学に興味を持ち、帰国後は埼玉県越谷市で薬剤師として活動。腎透析内科門前で3年間、小児科門前で5年間管理者を務めながら、科学的知見の薬局での利用法を模索。埼玉県薬剤師会青年部、埼玉県薬剤師会新人研修会での講演活動や業界情報誌での連載の経歴あり。2018年2月よりカケハシに参画。趣味は農作業。現在は人参作りに注力。

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ドメインエキスパートの業務内容

コンテンツデータベースの設計と作成
薬局体験アシスタント「Musubi」は、個々の患者さんに合わせたサポート内容を薬剤師に提案するシステムです。ドメインエキスパートチームが担うのは、「この薬の使い方は?」「副作用は?」など薬剤師が患者さんに説明する情報を、データベース化する役割。例えば、コンテンツの導出ロジックの作成もその一つです。単純にコンテンツを表示するのではなく、薬剤師の現場感覚に合致することを目指し、作成しています。

また、表示されるコンテンツの文章は、ドメインエキスパート自ら作文していきます。これは、「薬剤師が記録として残すための文章」「患者さんにお伝えする文章」というように、目的に合わせて相手に伝わる文章を提供していきたいという想いの現れです。手作業でデータベースを構築することはカケハシ創業以来のこだわり。地道な作業にはなりますが、薬剤師や患者さんに伝わりやすい表現の追求や導出ロジックのたゆまぬ改善がカケハシのプロダクトの特徴となっています。

開発チームへの企画提案
ドメインエキスパートチームは、プロダクト開発を担当するグループの一つとして組織されており、グループにおける自分たちの役割を明示すべく、連携する各チームに対して下記のように宣言しています。

・プロダクトに薬局の現場感を注入します
・プロダクトに薬学的専門性を注入します
・プロダクトに薬剤師の想いを注入します
・プロダクトに患者さんの期待を注入します
・プロダクトに医療の未来を注入します
・プロダクトに国の意向を注入します

これまで、コンテンツデータベースの作成・調整業務がチーム工数の大部分を占めてきたのですが、本チームの創成期も終わりに近づき、最近ではそれがチーム工数の50%ほどでおさまるようになっています。それに伴って、現在は各プロダクトに新企画を提案したり、プロダクトマネージャーの意思決定を支援したりと、企画の源流における役割の割合が増えてきています。

ユーザーからの問い合わせ対応
ユーザー(薬剤師)からのお問い合わせには、判断に専門性が要求されるものもあります。それらに対応するのもドメインエキスパートチームの役割です。文献を調べ、時には製薬メーカーに確認して、ユーザーにご納得いただける結論を導くために科学的な事実に基づく調査を行います。このようなユーザーとドメインエキスパートのキャッチボールは、私たちのプロダクトが臨床現場で役立つものとして成長していくために必要不可欠なものです。

ドメインエキスパートの存在意義

ドメインエキスパートとユーザーは、「薬剤師」という同じバックグラウンドを持つ者同士です。プロダクト開発におけるドメインエキスパートの存在意義を考えたときに、ともすれば、「社内にドメインエキスパートがいなくても、ユーザーヒアリングができれば問題ないのでは?」という疑問が浮かんだとしても当然のことかもしれません。実際、プランニングの基本ではありますがユーザーへのインタビューはカケハシでも頻繁に行われています。

しかし、ユーザーにはコメントできないことがあります。それは、『カケハシらしさ』。カケハシには、『日本の医療体験を、しなやかに』というミッションがありますが、プロダクトにカケハシらしさを注入するのはカケハシのメンバーにしかできないこと。多様なメンバーが共にディスカッションを行う輪の中には、ドメインエキスパートは欠かせません。ユーザーからいただくものは「要望」、ドメインエキスパートが生み出すのは要望の奥に潜む「課題」なのです。

データとの掛け算
しかし、課題の発見と口にするのは簡単ですが、実践するのは困難なことです。薬剤師として培ってきた知識をアウトプットするだけでは不十分。課題に迫るアプローチの一つとして、カケハシのドメインエキスパートは社内医療データの利活用に注力しています。カケハシには、プロダクトを通じてさまざまな医療情報が集まってきます。学術的知識、経験、医療に対する想いとデータの掛け算によりデータからヒントをもらい開発チームを支援していくことが、ドメインエキスパートには強く求められているのです。

ドメインエキスパートの成長例
データ利活用といっても、メンバーの多くはもともとその分野に明るかったわけではありません。チームで、また個人で、プログラミングをはじめとした必要な技術を学び、試行錯誤しながら取り組んでいます。どのように学んでいるか、メンバーに尋ねてみると……

▼ウェブの学習サイトの活用
まずウェブの学習サイトのpythonを一通りやってみた。最初はかなり時間がかかったがとりあえずちょっとずつやって1カ月でpythonの基礎講座を終えた。特にpandasのものがあったわけではなく、単純にpythonに慣れる為に触った。
▼速攻実践
まずExcelで計算してみてイメージをつけてから「pandasで同じように書くにはどうしたらいいか?」をひたすらやった気がする。メリットとしては、「Excelでこうやって出したんだけど、これってどうしたらいい?」とエンジニアに聞きやすいという点と、方法自体はわかってるのでGoogle先生で検索しやすい。デメリットは、Excelで計算してから書くので単純に2倍の工数が発生する。困っていると、エンジニアさんがフランクに助けてくれた。
▼競技プログラミング
直接は関係ないが、思考の整理やいろいろ知るために競技プログラミングをやってもみた。過去問を解いてたまにコンテストに参加してと、ロジックを考える必要があるので脳トレ代わりにやっていた。スコアは特に気にしてなかった。

そして、それぞれこんな手応えを感じているようです。

・エンジニアに頼まなくても自分でできる領域が増えた
・趣味でやっているカードゲームの管理表を作るのに便利
・4年前まで薬局で普通に薬剤師をしていた自分が、カケハシに入ってコードを書くようになるなんて1ミリも予想していなかった
・今までできなかったことができるようになるだけで、世界は広がるのを実感している

将来的に取り組みたい内容

薬学的専門性に基づいてデータを分析するチームに
すでにふれたように、薬剤師としての知見、薬学的な専門性をもとに、社内に集まる医療データを分析し、新たなアイデアや意思決定を支援する知見を生み出していくことこそがカケハシのドメインエキスパートの存在意義と考えています。そのためには、データ分析手法のキャッチアップはもとより、自らの問いを本質的に考え抜くだけの思考力や行動力を兼ね備えていかなければなりません。

よりユーザーに近いところで活動する
薬剤師であるドメインエキスパートが、薬剤師であるユーザーに近いところで活動する。矛盾しているように感じるかもしれませんが、ドメインエキスパートはプロダクト開発だけでなく、リリース後のサポートにこれまで以上に力をいれていきたいと考えています。なぜなら、ユーザーが使う瞬間にこそドメインエキスパートならではの効果的な使い方や要望に対する具体的な提案の需要が生じると思うからです。私たちが企画をする際は、臨床現場の意図を正確にくみ取るために、現場経験に基づく想像力を総動員していますが、この際に得られた知見はリリース後のユーザーサポートにも有用だと考えています。

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カケハシのドメインエキスパートについてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。私たちも、自分たちのあるべき姿を手探りで形作っている最中というのが正直なところ……。さまざまな会社のドメインエキスパートの方々からご意見やコメントなどいただけると嬉しいです。

また、元薬剤師のこんなメンバーたちと一緒にプロダクト開発してみたいというエンジニアの方がいらっしゃったら、ぜひカケハシへ。お待ちしています。


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