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カケハシが考える“医療のリデザイン”とそれを支える開発組織の文化形成

2016年の創業以来、私たちは薬局DXを起点とした医療のリデザインを目指して事業を展開しています。直近のシリーズC資金調達で累計調達額は131億円、組織も300人規模となり、今まさに新たなフェーズへと突入したタイミング。

そこで先日、カケハシのリアルな姿をお届けするべく、創業代表とCTO による初のオンラインイベントを開催しました。

これまでの歩みや医療のリデザインに向けた取り組み、それを支える組織づくりなど、カケハシの「今」と「未来」についての話題が取り上げられた今回。本記事では、カケハシを紐解く5つの問いに2人が答える形で進行しました。

Q1.カケハシって調剤薬局向けSaaSの会社じゃないの?

中川:
カケハシって外からはバーティカルSaaS企業、あるいは、調剤薬局向けの地味な業務システムをクラウドで作っている企業という印象があるのかなと思っています。しかし、カケハシが成し遂げたいのは、国民一人ひとりの医療そのもののあり方を大きく変えることなんです。

薬局という場を起点に医療全体の仕組みをより良いものにしたり、超高齢化社会になっている日本国内で、10年後、20年後にも続くサステイナブルな仕組みをつくることなど、医療に対して価値貢献をしていくことがカケハシのミッションだと思っているんです。

「カケハシがあったから日本の医療ってすごく良い方向に変わったよね」と言ってもらえる瞬間を作りたいというか。

スタートアップとしてちょっと成長したいよねみたいなことを思っているわけではなく、本当の意味で医療の問題に真正面から向き合って変化をつくっていく会社でありたいんです。それができないのであれば、僕らがここに立っている意味はないとも思っています。

── その想いは創業当初から?

中川:
創業したときから考えていたもので、今も昔もこの想いはブレていないですね。それに、カケハシのメンバーってみんなこの考えに共感して入ってきてくれていると思うんです。

みんな社会にとって正しいことにまっすぐ向き合おうという姿勢の人だし、そういうメンバーが揃っているのがカケハシのいいところだとも感じています。

たとえば、我々のファーストプロダクトである「Musubi」を例に挙げてお話できたらと思うんですが、「Musubi」は薬局で使用されている薬歴の作成業務をアップデートするサービスです。病院やクリニックにはお医者さんが書くカルテがありますが、薬局にも同様のものが存在しています。

ただこの薬歴はすごく書くのに時間がかかるんですね。これまでは40年間ほど日本有数のシステム会社さんが薬歴サービスをオンプレ型の仕組みで提供していましたが、それをさらにアップデートしようと生み出したのが「Musubi」でした。

そのため、一見すると「Musubi」が提供する価値は業務効率化のみだと思われてしまいますが、本質的には異なっています。カケハシが「Musubi」を通して伝えたいのは「薬局のあり方や薬剤師の存在価値などのアイデンティティを見直してみないか」というメッセージ。

一般的に薬剤師のイメージは、棚から薬を取ってくる人だとか、事務作業を行う人というものになってしまっていますが、本来は薬の専門家として素晴らしい知識を有する人たちです。そんな知的労働者の仕事を事務作業のみで終わらせてしまうのは本当にもったいないことなんです。

たとえば、チーム医療のなかで薬の専門家として立ち、副作用を防止する処方を医師と検討するとか、患者さんと服用について話をするとか。そういったことができるのは薬剤師しかいません。

そういった、本当に薬剤師が時間を割かなければならない瞬間を少しでも多くつくることを願って「Musubi」は誕生しました。

カケハシのプロダクトはどれも業務効率化、クラウド化などと思われてしまいがちですが、どれも業界全体に強烈なメッセージを問いかけるためのものでもあるんです。

── 創業して7年。印象的なプロダクト立ち上げの思い出は?

海老原:
いくつかありますが「Pocket Musubi」というBtoBtoCサービスの立ち上げは特に印象的でした。「Pocket Musubi」は薬局と患者さんとの間で服薬における支援を行うサービスで、カケハシから薬局の方々にご提案し、そこから患者さんにご提案いただくというフローでユーザー数を拡げています。

「Pocket Musubi」の開発を行うことになったのは今から4年前でした。2019年の2〜3月頃に「『Musubi』だけではなく、そのサイドにおけるより患者さんに近いプロダクトを開発したい」と会社に提案したのがはじまりで、それが現在のようなプロダクト複数展開の最初の一歩でした。

じゃあ、どうして「Pocket Musubi」の開発の必要性を当時感じていたのか。それは薬剤師の仕事という専門的な価値にフォーカスするだけではなく、その先にいる患者さんにとってもハッピーな社会をつくりたいと思っていたからなんです。

カケハシのデジタルデータを集約し、患者さんをセンターにしたアーキテクチャをつくることで、患者さんに提供するべき医療を判断したり、それに付随するサポートを提供することができるようになるのではないかなと。

ソフトウェアサービスを開発する人間として、この発想はとても自然なものでした。なぜなら、サービスの設計=データをどのように関与させるかの設計と言い換えることもできるからです。

その際、どういったデータがセンターになるのかはとても重要なことなんです。そう考えたとき、カケハシは最終的に医療従事者の先にいる患者さんも含めた医療体験の向上を掲げているので、患者さんを中心とした設計が必要だなと考えました。

さらに、患者さんをセンターに置いた仕組みづくりを行うのであれば、患者さんが日常的にどういった服薬を行っているのかに着目したサービスをカケハシとして出していく必要があるなと思ったんです。そういった思想と直感が働き「Pocket Musubi」が生まれました。

── 今のカケハシはどう紹介するのが“らしい”のか?

中川:
今は医療の新しいエコシステム創出に向けた第二創業期みたいなものだと思っています。

これからは、一般の消費者にはなかなか見えない医薬品の卸さんや製薬会社などを含めた医薬流通の課題を解決することも必要ですし、いずれは医療全体を支える国の皆保険制度そのものの課題解決もスコープに入れて事業の検討を進めていきたいと思っています。


Q2.複数プロダクト展開の意図は? その先に何を目指している?

中川:
いわゆるリーンスタートアップの考え方では、限られたリソースだからこそ一点突破するっていうのが正しい事業戦略だと言われています。

ただし、それはあくまで巨大なマーケットがあるようなスタートアップに限る話。バーティカルSaaSに対し、ホリゾンタルSaaSと呼ばれるSalesforceやSlack、国内ではSmartHR、Sansanなどが代表例です。

こういった企業はマーケット自体がとても大きいのでひとつのプロダクトで一点突破するのが定石ですよね。

一方で、アメリカのスタートアップでもバーティカルSaaSはトータルサービスで展開するスタイルをとっています。

たとえば、アメリカのレストラン向けに事業を展開しているToast(トースト)は、レストランの予約サービスをはじめ、POSレジシステム、仕入れなどの課題解決を行い、さらにはFin Techと掛け合わせた経営改善までをトータルサービスで提供しています。

また、建設SaaSのProcore Technologies(プロコアテクノロジーズ)もいわゆるSaaSモデルからFin Techを組み合わせて事業モデルをつくったスタートアップ。国内でいうと介護事業者の経営支援サービスを手掛けるエス・エム・エスなども同様の例です。

バーティカルSaaSの利点は、業界の課題を深くまで理解できるため根本的な課題解決を目指せること。ただし、ホリゾンタルSaaSと比べてマーケットサイズが小さいので、早いタイミングで課題解決に動き、横展開していく必要があるんですよね。

カケハシでも、薬局で行う業務における課題の大半を我々のプロダクトで解決し、そこから患者さんの課題、医薬流通の課題に手を伸ばそうとしている。この流れは、アメリカで成功しているバーティカルSaaSの成長戦略とぴったり合致しているといえます。

海老原:
カケハシの提供するプロダクトは、互いが有機的に連携してソフトウェアスイートな状態をつくることを目指しています。

サービスの数こそ多いけれど、顧客にとってはひとつのサービスとして受け取れるような提供の仕方を考えていく必要がある。そういった意味では、アメリカで注目されている“コンパウンドスタートアップ”的な側面がカケハシにはあるのかもしれません。

ただ、カケハシの特異性として、特定の領域に対して一気通貫するというシンプルな構造なのではなく、直接的な価値提供先からその先にいる生活者、この場合でいうと患者さんまで波及していくことが挙げられます。

薬局に対する価値提供を行なっているのはそうなんですが、サービスのデータアーキテクチャセンターにいるのは薬局ではなく患者さんと考えていますし、薬局に対する価値提供を行うことで患者さんにもサービスの価値が染み出していきますよね。

そういった意味では、医療という領域に対して患者さんも含めてコンパウンドな仕組みで事業をつくっているのがカケハシだと思うんです。そう考えると、また面白いよなと感じています。

── 今後、具体的に取り組もうとしていることは?

中川:
わかりやすい事例を用いて少しお話できたらと思うんですが、今まさに処方箋が電子化されていく流れがあったり、マイナンバーカードが保険証の代わりに使えるようになるみたいな大きな変化が訪れています。

コロナ禍に入って医療のオンライン化も進んできており、オムニチャネル的な世界観の広がりが生まれていますよね。

そういった世界が加速すると、たとえばいずれスマホのアプリで医師の診察が受けられて、薬剤師さんの服薬指導を受けられて、自宅にそのまま薬が届くみたいな未来が訪れると思うんです。そこで考えていただきたいのが、医療のニーズの多様化について。

仮に、毎年飲んでいる花粉症の薬を受け取りたいという話であれば、重度の疾患ではないですし副作用リスクもそう高くはありませんから、オンライン上で完結できる医療のニーズが十分にありえます。エコシステム的にも経済的にも合理的な選択だと思います。

ただ、たとえばガンのような重たい疾患や薬の副作用が心配だという場合など、そういった際のニーズはおそらく先ほどの例とは異なるはずです。多くの薬を処方するうえでの副作用リスクもありますし、副作用が発生した際の対応についても不安がある。

そんなとき、ガン専門の認定を持っている薬局や、年間でガン症例の薬を多数扱っているスーパー薬剤師さんなどを予約し、相談できるような状況があれば、今よりも安心して薬を服用できます。そして、その薬も調剤センターから自宅に郵送される……というような。

こんなふうに、患者さんの状況に応じて医療ニーズは異なっており、それに対応した世界観を実現できるような未来が近づいてきているんです。

今お話した例は、まさに患者さんの体験や医薬流通などが組み合わさって生まれた理想とするエコシステムです。

このエコシステムをカケハシがすべて構築するという話ではなく、いずれそういった未来がくることを見据えて、医療従事者が輝く世界をつくったり、患者さんが安心して医療を選べるような状況を整えていくことが必要なのだと思っています。

── 個人に適したかたちで医療サービスが提供される必要性を感じている?

中川:
そうですね。実はカケハシの提供している「Musubi」や「Musubi Insight」などを見てみると興味深いデータが確認できていて、患者さんに対して一生懸命に服薬指導を行っている人とそうでない人では治療の継続率にも差が生まれているんです。

そういった結果を見ると、頑張って患者さんに向き合っている医療従事者が評価されてきているのだろうし、それがさらに見える化されて患者さん自身で安心して選べるようになればと思うんですよね。

少し前に「カリスマ美容師」なんて言葉が聞かれる機会がありましたが、それの薬剤師バージョンのようなイメージで病院や薬局を患者さんが選べる世界観がもっと整ってほしいなと。

あとは、薬の管理に使用されているおくすり手帳も、最近は電子化されてきていますがそれだけでは退屈だなと思っていて、もう少し動的な機能があればと感じています。日々忘れず薬を飲んでいたり治療を継続することを、もっとポジティブに感じられるような……。

そういったかたちで楽しみながら健康になれる仕掛けづくりなんかができれば、重症化を防ぐきっかけにもつながりますし、高齢化が進んでいく日本社会においては重要な機能を果たすのではないかと思っています。


Q3.複数プロダクト開発のための組織体制とは?

海老原:
「すべてを見越してパーフェクトな組織設計をしているので、ぜひみなさんも参考にしてみてください」って言えたらめちゃくちゃ格好いいんですけれど、極めて過渡期的な状況だろうというのが本音です(笑)。

さきほど話題に出ていたコンパウンドスタートアップの概念は、その体制を最初から強く意識して組織設計を行わないと大変だとよく言われているんですが……「はい、大変です」というのが正直なところです。

というのも、少し前までは「Musubi」「Pocket Musubi」「Musubi Insight」とプロダクトごとにチームがある状態でしたが、一昨年頃からそれらを横断する機能開発チームをつくり始めました。

2022年の初めに私が統括している開発グループ全体のキックオフミーティングを開催したんですが、そのときに「基盤的な開発グループをつくります」とグループ全体に話をしたんですよね。そのときに、横断的技術基盤に対して熱量高く取り組んでいくぞという意思表示をしたのが最初だったかなと。

やっぱり複数のサービスを同時に展開しながら、それらを横並びにするだけではなく相互に組み合わせることによって生まれる最大の価値をつくり出していかないといけない。その実現のためには、基盤部分に投資していかないとならないよなっていうのは、今本当に実感しているところです。

なかでも特に重要だなと感じているのは、データ連携の設計です。たとえば、サービスをつくるとき、実際にユーザーに提供する体験、UXの部分は基本的にリーンな姿勢でいいと思うんです。

仮説検証において一番難しくて重要なところから着手するべきで、いろいろな機能をすべて念頭において重厚な開発をする必要はありません。素早く開発しようっていうのはド正論です。

ただ、連携という点を意識すると話が少し異なっていて、ひとつのサービスで取り扱っているデータが他のサービスにおいても同じ概念を表現しているデータとして突合できるかどうかが大切です。

叶うのであれば同じデータソースをアプリケーションデータとして活用したいわけで、それを実現しようとすると、考えておかなければならないことが増えて開発初期の設計工数が一気に爆増するんですよね。

コンパウンドスタートアップといわれる概念において、最初からその設計を意識していないと大変だといわれる所以はそういった点にあると思っています。

カケハシは全サービスを相互に連携させていくための技術基盤を整える開発組織チームに対して大幅に投資しようとしているのが今のタイミングなので、すごく過渡期的な状況だと感じています。

サービス同士が合わさるなかで薬剤師さんにとって業務システムとして断絶を感じない設計とはどういったものなのか。そこについて専任的に担当する役割が今のカケハシには必要です。

というのも、特定のサービスを担当していると、やっぱりそこを育てたいって思うのが必然なんです。だからこそ、サービスを横断しながらUX設計に携わる専任人材の重要性を感じています。

中川:
たしかにそうですよね。これはよくカケハシのエンジニアやデータサイエンティストの方と話すことなんですが、多くの会社ではデータ基盤を整えたとしても、その目的は社内での分析や解析、意思決定材料の創出みたいなところだったりするんです。

ところが、カケハシでのデータは複数のプロダクトを一気通貫で提供するためのコアになる部分ですし、そのデータ自体が事業競争力に進化していく。

ですからデータ基盤を整えることに賭ける情熱が、そのままカケハシの将来を左右する決断だったりする。そういった気合いの入っている部分を担当できることは、カケハシのデータ基盤系のエンジニアとして働く醍醐味だと教えていただいたことがあって、なるほどなと思いました。

── プロダクト開発を進めるうえでの優先度づけはどう行なっているのか?

中川:
カケハシは現在5つのプロダクトを持っていて、なかでも「Musubi」はTHE業務基幹システムということもあり、本当にたくさんのご要望をユーザーさんからいただいています。

そういったご要望はスクラム単位で​​Backlogにて管理しており、プロダクトマネージャーを中心に顧客にとっての優先度、ペインの重さを鑑みて開発のパイプラインに組み込んでいるのが現状です。

その過程で強く意識しているのは、ご要望を表面的に受け取るのではなく、その声をいただいた背景や実現したい理想の状態を理解したうえで優先度を検討すること。

ご要望に対してそのまま反映をするばかりではなく、そもそも課題が発生しないような解決策を考えることもありますし、汎用性の高いご要望なのかどうかもしっかり見定めています。課題の深い部分を解決していくことが、本質的には重要だという考えで開発を行なっていますね。

あとは、技術負債の観点についても重要視しています。なかなか技術のバックグラウンドがないスタートアップ経営者だと、わかりやすいものに飛びついてしまいがちなんですよ。顧客要望がたくさんあるからとか、新規開発に全振りしちゃうとか。

でもそれって、下手すると掘っ立て小屋の上に掘っ立て小屋をつくっている状況なので、いつか崩れ去っちゃうレベルの超ヤバいビルをつくっている状態にほかならないんですよね。

しかも、我々は業務基幹システムですし、個人情報や医療情報も多数扱うプロダクトを開発しているので、障害を起こしてサービスを止めるわけにもいかない。

目の前のわかりやすさに飛びついてしまうといずれ開発の速度にも影響が出てきてしまうので、リファクタリングを行なってコードの品質を担保するとか、技術者の開発体系を良くしていくとか、継続的に妥協しない状況をつくることなどを意識しています。

もちろん事業のフェーズによっては新規開発を優先せざるを得ない状況もありますが、それでも品質の維持は優先度を下げるべきでないと思いますね。目には見えないかもしれないけれど、そういった部分をちゃんとやる大切さを理解した組織でありたいです。


Q4.一点突破“じゃない”スタートアップの組織文化とは?

海老原:
最近、コンパウンドスタートアップという概念についていくつか言及がされていると思います。論点の一つとして、プロダクトが複数に増えてくるフェーズでの文化と事業戦略がなかなか一致せず難しいという話で、私もうなずきながら読んだんですけれども。

わかりやすい難しさの一つとしては、認知負荷の高さ、世間一般で言われがちなこととのギャップという問題だと思っているんですよね。

世間でよく言われているベストプラクティスがあるが、事実は異なるみたいなことってコンパウンドスタートアップに限らず生きているとそこそこ出会うものですよね。

ベストセラーに書いてあることや人気のブログに書いてあることに影響される機会は多いですが、それが必ずしも正しいわけではないみたいな。

それに似た話で、スタートアップにおいて「選択と集中」はとても大切ですが、バーティカル領域でより良い価値を提供したい場合は前提になるその考え方そのものが少し異なるんだと思うんです。

そして、そこの認知負荷が高いのかなと。解決策としては、最初から認知負荷を引き受ける前提の文化づくりをすることなのだろうし、メンバーが「そういうものだよね」と思いながら進められる場をつくることが本来必要なのだろうとも思います。

カケハシでその役割を果たしているのが6つのバリューです。まあ、最初から意識してつくったものなのかと言われると、そんなことはないんですけれど……。「我々はコンパウンドスタートアップなので、それに準じて6つのバリューを設定しました」といえたら格好良かったですよね(笑)。

https://handbook.kakehashi.life/values より

海老原:
バリューを制定したときも、いつか訪れるであろう認知負荷に立ち向かうというか、潰されることなく前向きに物事を考えていける組織でありたいなということは強く意識していたように思います。……と、バリューの話になると一生語れてしまうんですけれど……手短にお話しますね。

私自身、思い入れの強いバリューは「高潔」と「無知の知」でして、最近の推しバリューは「無知の知」なんです。というのも、「情報対称性」とかもそうですけれど、自分の認知の偏りを破壊して謙虚に立ち振る舞うことがコンパウンドスタートアップにとってすごく大切なことだなと思うので。

結局、カケハシが提供している全サービスがどのように連携してひとつのサービスとして顧客に価値提供をしているのかが最も重要なので、それに対して「価値貢献」できることも必要ですし、組織全体が「情報対称性」の高い状態でないと、そもそもその提案すらできない。

という感じで、意図してはいなかったものの、複雑性のある状況に対してなんとか乗り越えようとする考え方をバリューとして表現できているのかもしれません。これからもそういった意思に自覚的でありたいとも思っています。

中川:
私からは少し別の視点でお話しますね。カケハシには、結構あるあるの勘違いっていうのがあるんです。それが「すごくフェーズの進んでいるマチュアな会社」だと思われがちっていうもので。採用候補者の方に「求めているフェーズとは異なるかもしれません」と言われることも多いんです。

たしかに、正社員数も300名を超えて、グループ全体では500名近い規模になってきました。

ただ、実際はプロダクトが複数乱立しているのでマチュアなものもあれば、シードにすら到達しておらずPMFを一生懸命模索しているものもある。プロダクトによってフェーズがバラバラです。それに加えて、プロダクトを統合するデータ基盤や連結性の担保を担うチームもある状態です。

プロダクトごとにフェーズが異なるので安定的に運用できる側面もありますし、自律性高くゼロから開発する楽しさという側面もある。

マルチプロダクトでどう世の中を変えていくのかと考えられる側面もあるので、いろいろな人のニーズにフィットできる場所があるんですっていうことは伝えたいですね。

また、そういった状況だからこそバリューにもあるように「情報対称性」が本当に大切なんです。マチュアなプロダクトにおいてはプロセスも見ながら丁寧に開発することが求められますし、0→1段階のプロダクトにおいては仮説検証を高速で回すことが求められている。

それらの状況を理解したうえで事業運営を行うわけなので、お互いの状況を積極的に理解していく必要があります。

── バリューの体現を強く求められる組織なのか?

海老原:
みんながバリューについて常に強いプレッシャーを感じるような状況にはしたくないですけれど、ひとまず経営陣が一番体現できていないとなとは思いますね。「海老原、やっぱり高潔じゃないよね」って言われたら割と終わりなので……もしそう感じている社員の人がいたらぜひ教えてください(笑)。

高潔の話を少し続けたいんですが、カケハシにとって高潔であることもすごく重要だなと思うシーンがあって。これまでの話でデータにまつわる話をよくしていますが、このデータって極端にいうと自由に取り扱っていろいろな売り出し方ができちゃいますよね。

でも、患者さんにとって大切な個人情報だからこそ、ご本人に還元する形でしか活用しない。基本的に医療というものに携わっている我々だからこそ、その場から絶対に足を踏み外さないという意思があるからです。それもひとつの「高潔」だと考えています。

中川:
たしかに高潔っていうバリューはカケハシらしいですよね。医療とか社会にとって正しいことをするっていう意思をカケハシは一番大切にしていて、お金儲けは二の次だと思っている。間違ったことをして儲けるくらいなら、会社が潰れたほうがいいっていう覚悟を持っているので。

そう心の底から思える人じゃないと医療っていう場所にはいてはならないと思うんですよね。

「カケハシの人って、本当に医療とか薬局のことを真面目に考えてくれる人だよね」と言ってもらえる機会はありがたいことにすごく多いですが、「多い」ではなく全員がそうであること、そうであり続けることが大切なんです。

もちろん、ひとりの人間ですし聖人君子ではないので間違えることもあるかもしれませんが、でも正しくありたい。そう思い続けられるピュアな人の集まりでいたいとは思います。

ただ、こう言うとなんかハードルが高くなっちゃいますよね。以前、ある候補者が「自分がこのバリューに適するかどうか自問自答していて、オファーを受けるかどうか悩んでいます」って言ってくれたことがあって。

「いや、そう思える時点で大丈夫です」と思いましたね(笑)。完璧な人間ではないからこそ、我々の目指すものとして「高潔」や「無知の知」を据えているのかもしれません。


Q5.コンパウンドスタートアップに向いている人(エンジニア)とは?

海老原:
前提としては、今までと変わらず医療の世界に価値を提供していきたいと思っている仲間を増やしたいと思っています。

そのうえで、今後の投資領域として全体の基盤を支えたり、プロダクトを横断するデータを扱ったり、あるいはUXを含めたプロダクトごとの相互連携を担い、ひとつの価値を生み出すことに挑戦してみたいと感じていただける人にとってはちょうどいいタイミングかなと。

具体的には、現在蓄積されている臨床レベルのデータを患者さんに還元する流れをつくっていきたいので、蓄積されたデータからなんらかのインサイトを生み出し、プロダクトに還元するようなデータの利活用にまつわる実装・開発を行うつもりです。

本当に難しいチャレンジではありますが、挑戦しがいのあるテーマなので面白そうだと感じていただけるならぜひ一緒にやりましょう。

中川:
プロダクト横断的なデータ基盤の構築はカケハシの将来のコアそのものなので、本気で取り組んでいくし、力を入れていきます。また、カケハシは日本で一番コアな医療データが集積する場所にもなってくると思いますし、医療系のクラウドサービスとしてはリーディングプレイヤーを目指しています。

そういった立ち位置で、社会や医療にインパクトを出すような取り組みに興味がある方は、ぜひカケハシの仲間に加わっていただきたいですね。

海老原:
あと、組織文化とかメンタリティの話もしていいですか。カケハシって事業としての価値提供の話以外にも、組織文化を形成するための仕事の仕方にもかなり投資をしている会社だと思っています。

働き方であったり、組織づくりであったり、単に開発する以外にも、そういった組織的な部分に興味のある人にとっても面白い側面があるかもしれません。


ボリュームたっぷりの記事となりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。さまざまな話題が飛び交いながらラフにセッションを行なった今回。カオスなところも含めて、生のカケハシの姿を少しでも感じていただけていたらうれしいです。

なお、カケハシでは現在も一緒に事業をつくる仲間を募集しています。今回の話やカケハシの発信を通して、「興味が湧いた」「話を聞いてみたい」と思ってくださった方は、お気軽にお声がけください!


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