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カケハシが、薬局DXの先に見据える医療の未来について。

こんにちは、カケハシCEOの中川です。このたびカケハシは複数の新規投資家および既存投資家を引受先とした総額約76億円の資金調達を実施しました。

「明⽇の医療の基盤となる、エコシステムの実現」というビジョンの実現に向けて、私たちが今後どんな取り組みを行っていくのか。ここで改めて整理しておきたいと思います。

薬局DXを起点に「医療の次世代化」

カケハシは「日本の医療体験を、しなやかに」をミッションに、医療従事者やパートナー企業のサポートのもと事業を推進してきました。2017年に電子薬歴・服薬指導ツールとしてスタートした薬局体験アシスタント「Musubi」は、市場シェア10%を超え、全国7,000店舗以上の薬局に採用されています。

また薬局向けデータプラットフォーム「Musubi Insight」、患者フォローアップアプリ「Pocket Musubi」、医薬品在庫管理・発注システム「Musubi AI在庫管理」などプロダクトラインナップを拡大。

現在では薬局の業務支援ツールとしてだけでなく、2015年に厚生労働省が策定した「患者のための薬局ビジョン」や近年の薬機法改正、診療報酬改定などで問われている“薬局の次世代化”を推進するためのプラットフォームサービスとして選ばれるようになり、「患者さんの反応が変わった」「薬剤師さんの行動が変わり、薬局の経営改善につながった」といった実際の声が日々寄せられています。

とはいっても、それぞれのプロダクトでやりたいことがすべて実現できているわけではないですし、むしろまだまだこれから。薬局で働く方々と薬局を利用する患者さんの体験を明確に変えることのできるプロダクトを目指し、磨き上げていかなくてはなりません。

同時に、薬局という領域だけにとどまらない、新たなサービスの立ち上げにも挑戦することが必要です。「日本の医療体験を、しなやかに」というミッションを体現するという意味では、むしろここからが本番だと考えるべきかもしれません。

これからカケハシはどのようなテーマに挑んでいくのか、いくつか例を挙げてみたいと思います。

患者さんの医療体験を次世代化する

ひとつは、患者さんの薬局体験、ひいては医療体験そのものの変革というテーマです。

ここから5年〜10年スパンでイメージしたとき、デジタルテクノロジーをベースに医療の選択肢が広がっていくのは間違いないでしょう。

例えば朝起きて「あれ、風邪かな?」というときに、手元のデバイスからアプリを開くと、疾患や症状にみあった医師や薬剤師がマッチングされる。診察も服薬指導もオンラインで完結し、薬は24時間体制で配送される。そんな未来が現実になっていくなかで、利便性だけでなく医療としての安全性や品質をいかに担保していくかというのは非常に重要なポイントだと思います。

一方で、医療にはちょっとした風邪や花粉症のようなものもあれば、抗がん剤治療や在宅医療など専門性の高いケアが必要なものも当然あるわけです。

こうした幅広い患者ニーズに対応する形で医療サービスはどんどん多様化・多層化していき、そのグラデーションのなかから患者さんが自分に最も適したものを選んで利用するという世界に、これから少しずつ近づいていくのだろうと思います。

そこで出てくるのが、各医療機関・各医療従事者の専門性をいかに可視化するかという問題です。

病院だけでなく、例えば薬剤師さんも実は個人個人で専門性の違いがあるんですよね。もし自分や家族がガンを患ってしまったとしたら、ガン専門の資格を持った薬剤師さんに診てもらいたいと思うはず。副作用などさまざまな不安や悩みに対して的確に対応してもらえることの価値は決して小さくないと思うんです。

しかし現状、患者さんが医療従事者それぞれの特徴を把握することは難しく、自分にあった担当者を見つけることは非常に困難だと言わざるを得ません。(患者さんが担当の薬剤師さんを指名する「かかりつけ薬剤師」という制度もありますが、みなさん活用されてますか……?)

すぐれた専門性をもつ方、丁寧な応対が評判の方、そうした医療従事者それぞれの特徴が患者さんに見える化され、自分にあった担当者を選ぶことができるようにする。

もちろん医療の専門性は口コミで評価できるようなものではありません。実際の医療行為に伴うデータをもとにした客観的な基準を構築するなど、レストランの口コミのようなものとは一線を画す仕組みが必要。

そこに、カケハシとして何らかのソリューションを提供することができるのではと考えています。

医療体験の礎となるサプライチェーンに“しなやかさ”を

さらにもうひとつ、こうした医療体験を支えるサプライチェーンの支援というのも今後の重要なテーマになると考えています。医薬品の製造からデリバリーにいたる一連の流れを改善し、製薬企業や医薬品卸企業と協力しながら、よりよいモデルを創出していく動きです。

今、医療用医薬品の供給不足が問題になっているのをご存知でしょうか。もしかすると薬局で「いつもの薬じゃないんですが……」と別のメーカーの製品を案内されたことのある方もいらっしゃるかもしれませんが、ジェネリック医薬品を中心に幅広い種類の医薬品供給が追いつかず、患者さんに提供できない状況も出てきています。

今回の件に関しては一部メーカーの品質問題に端を発した現象ではあるものの、将来にわたって医薬品の安定供給を確実なものにしていくためには、医薬品ごとの必要量を高精度に予測し、需給バランスを保っていくための仕組みが不可欠だと思います。

例えば、カケハシは薬局向けに医薬品在庫管理システム「Musubi AI在庫管理」を提供していますが、これは薬局の店舗単位で発生する医薬品需要を、AIを活用して予測するというものです。

もちろん導入シェアや予測精度次第ではありますが、プロダクトを通じて得られた需要予測データを可視化し、製薬会社メーカーや医薬品卸の方々と連携することで、実際の需要に基づく製造・配送の最適化に寄与することができるかもしれません。

目線を移せば、過疎地域をはじめとした非都市圏の医療インフラをどう支えていくか、といった課題も存在しています。例えば離島への医薬品配送などは、実は医薬品卸さんが「地域医療を支えるために」という使命感のもと、収益性を度外視して実施されていることも少なくないんです。こちらもやはり、長期にわたって持続可能な構造へとシフトできるかどうか、厳しく問われている状況だと思います。

このような潜在的な課題も含め、医薬品流通の改善に貢献していきたい。製薬メーカー、医薬品卸、薬局、それぞれがwin-win-winの関係でサプライチェーンを構築することは可能だと思っていますし、その視点でアプローチをしていくことこそが、“カケハシらしさ”なんじゃないかと考えています。

カケハシは、新たなスタートラインに立っている

この厳しい市況環境のなかで今回の資金調達を発表することができたのも、いつもカケハシを支えてくださっている皆さまのおかげです。

私と中尾が出会い、カケハシを立ち上げたのが約7年前。目に見えるプロダクトも過去の実績も後ろ盾もないのに、ただただ熱っぽく「日本の医療をより良くしていきたい」という思いと夢を語る私たち。

いま思い返しても冷や汗が出てきますが、そんな私たちを信じ、支えてくださったのが、たくさんの薬剤師さん・薬局オーナーさんでした。皆さまがカケハシを「同じ未来をみることのできる仲間」として認め、ともに歩んできてくださったからこそ、今があります。本当に、感謝の言葉もありません。

とはいえ、カケハシはまだ何かを成し遂げたわけではありませんし、むしろやっと今スタート地点にたてたという感覚のほうが強いです。

カケハシには「高潔」というバリューがありますが、その言葉のとおり、易きに流れることなく、日本の医療の未来にまっすぐ向き合っていくのがカケハシです。

システム提供者の視点にとどまることなく、あくまでも“より良い医療のあり方”を模索し、社会に貢献することのできる会社でありつづけたいと思っています。

「明日の医療の基盤となるエコシステムの実現」という大きなビジョンから目をそらすことなく、ここからまたギアをあげて走り続けます!

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引き続き、カケハシは全方位的に積極採用中です。

直近でオンラインイベントも予定しています。事業のこれから、カルチャーや組織体制など、私とCTOの海老原からいろいろとお話できればと思っています。ぜひお気軽にご参加ください!

それでは、2023年のカケハシもどうぞよろしくお願いいたします!

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