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BtoB SaaSのプロダクトチームが顧客解像度を爆上げした3つの取り組み

この記事はカケハシアドベントカレンダー2022 3日目の記事です。
https://adventar.org/calendars/7444

カケハシでは薬局のあり方をアップデートし、医療体験をより良いものに変化させるための独自のプロダクトを展開しています。

社内には医療業界のバックグラウンドを持つメンバーも在籍していますが、その限りではないこともあり、プロダクト開発に携わるうえでは業界・顧客理解が重要視されることもしばしば。

そこで今回の記事では、医薬品在庫管理・発注システム「Musubi AI在庫管理」や新規サービスのプロダクトリードとしてチームを束ねる山本がチームで顧客解像度を高めるために行ってきた取り組みをご紹介します。

山本惇一 Junichi Yamamoto
一橋大学商学部卒業後、東日本電信電話株式会社入社。シンクタンクに出向し国内外のICT動向のリサーチ、グループ子会社でWi-Fiアプリのプロダクトマネージャー等を経て、株式会社リクルートコミュニケーションズ(現株式会社リクルート)に転職。AIを活用した新規ソリューションのプロデューサーとして勤務した後に、株式会社カケハシへ。

顧客解像度の向上に努めた2022年を振り返る

こんにちは! カケハシで「Musubi AI在庫管理(以下、AI在庫管理)」と新規サービスのプロダクトリード(PdM/PMMなどのまとめ)をしている山本です。

今回お話するAI在庫管理は昨年9月にリリースしたばかりのプロダクト。初期は導入数も数十件、機能も不足していたり、他システムとの並行利用をされるなど様子見段階のお客さまも多い状態でした。

「このままではサービスの利用継続が難しい」といった声をいただく機会もあり、今年の10月頃からは機能開発や改修などに徹底的に注力。

そうしたことで「求めていた在庫管理に近づきました」「今後は他の薬局にも勧めていきたいと思います」「こういうプロダクトをつくってくれる会社があることに感謝」といった非常にありがたい声が届くようになり、プロダクトが大きく成長した一年でした。

大きな成長の背景には「チームとして高い解像度で顧客課題や顧客の状況にフォーカスすることができた」という点がありました。そこで今回は「プロダクト組織のマネージャーとしてどんなことを行ったのか?」というテーマで一年間の取り組みをご紹介していければと思います。


1. 「異職種ペア」での薬局訪問

AI在庫管理のチームは2020年6月のコロナ禍に生まれました。

当時は薬局への訪問を自粛せざるを得ない状況だったうえに、オンライン会議こそあるもののメンバー同士で深いコミュニケーションを取る時間がなかったり、自社プロダクトの立ち上げに関わるのがほぼ初めてというメンバーが多いなどの背景から、異職種でのコミュニケーションがなかなかスムーズに取れないといった課題が発生していました。

プロダクト自体はリリースしたものの、薬局業務やプロダクト理解が曖昧なメンバーが多く、薬局へのオンボーディング時に満足なフォローができないケースも。またデザイナーも、リリース前後からの参画ということもあってまず画面デザインにフォーカスしなければならず、薬局業務の解像度が粗い状態でした。

そこで始めたのが、PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)とPdM(プロダクトマネージャー)もしくはデザイナーが一緒に顧客訪問をしてプロダクトの課題を深堀りする取り組みです。コロナが落ち着き始めた今年の5月頃から訪問を始め、20〜30回に渡って実施しました。

異職種で同じ景色を見ることで得られたメリットは大きく2点あります。1つ目は「〇〇薬局のこういう使い方だと……」というように、機能の背景にある課題や、薬局業務の全体感の共通認識が持てたこと。

結果として「発注画面のこのアイコンはこう使われるよね」といったように、機能の細部までの議論が深くできるようになりました。

ヒアリングの結果生まれた「必須買い」「安心買い」という、2つのAIアルゴリズムを使ったロジック。「AI在庫管理のAIをどれくらい信用したら良いのか」という顧客の漠然とした不安感に対して、UIを改善し、オンボーディング時のサポートも並行して行った

2つ目は、チーム全体に他者の視点を吸収するような動きが生まれたこと。

PMMがデザイナーと一緒に薬局までの往復をするなかでさまざまな会話が生まれたことで、PMMが自主的にUXデザインの本を読んだり、デザイナーがとある薬局に1日訪問して薬局の状況を観察するようになるなど、自主的に相互理解を深めるように。

その後、オンボーディングの体験設計の見直しにデザイナーが積極的に関与したり、PMM/PdM/デザイナーの毎週のディスカッションのなかで、プロダクトのUIに関する議論がより活発に行われるようになる、といった効果も生まれました。

デザイナーとPMMがディスカッションして新たに整理されたオンボーディング時の資料。AIというとっつきにくいテーマをわかりやすく、ゴールまでのステップが可視化できるようにした点がポイント


2. 全職種の目線を合わせるための「情報対称性の徹底」

隔週で1時間、プロダクト関係者内でプロダクトに関する現状認識をあわせる「AI在庫 All hands」を実施しています。

このイベントでは、各Sprint(2週間単位)のリリース内容や、顧客要望に基づく機能開発リストの優先度といったプロダクトチームからの情報共有のほか、オンボーディングを担当するメンバーがお客さまからのフィードバック(良い点、改善要望)などを一次情報として共有しています。

また、日々のオンボーディング活動を行っているなかでのお客さまの要望や状態(うまくいっている点や課題点)も開発メンバーを含めたSlackチャンネルで伝達。そのSlackを起点にしてすぐに対応すべきテーマなのか、特定のお客さまに限った話なのか、汎用的な課題なのかなどの議論も頻繁に行われています。

このように開発サイド・フロントサイドの情報を極力透明化することで、急な差し込みなどを含めメンバーの共通認識が取れて、プロダクトの価値向上につながる改修がスピーディに実行されるようになっています。

日々いただく顧客要望のなかから、PdM側で比較的早期に対応をしたほうがいいテーマはピックアップ。「スケジュール未定だが対応予定の顧客要望」という形でメンバーにシェアしています
Slackでやりとりされている、顧客オンボーディングの状況メモ


3. 「OKRを活用」して理想の顧客状態をチームで認識

半年後の状態をチームで認識を合わせるためにOKRを活用しています。隔週でレビューを行い、期末に達成したい目標の目線合わせや「目標を達成するために大きくジャンプしないといけないことや障壁はなにか?」といった内容をディスカッションしています。

現在は、共通のObjectiveに対して、PMM側・プロダクト側それぞれにKeyResultを設定。

たとえば、「30店舗未満法人がAI在庫の利用に一定程度は満足している」というObjectiveに対して「10月末時点で導入済みの顧客の80%以上のサクセスが見込める事例ができている」というPMMサイドのKR、「来局予定のF値が60%以上の店舗割合が70%以上である」といったプロダクトサイド(例はデータサイエンス領域)のKRを置くといった形式です。

これにより、あるべき半年後の姿に対して何をすべきか、PMMサイド・プロダクトサイドそれぞれの目線が揃って、お互いに共創しながら理想の状態に向けてプロダクトを育むことができるようになっています。


最後に宣伝です!

今回は、AI在庫管理チームで取り組んだ顧客解像度を高めるための取り組みをご紹介しました。

チームメンバーから、具体的なプロダクトのアップデート内容や、それに紐付いて得られた顧客満足度向上などについての記事公開を予定しています。ぜひそちらもあわせてご覧ください!

また、このようにカケハシには職種間の垣根を超えて、お客さまにとって本当に価値のあるプロダクトを解像度高く作れる環境があります。

AI在庫管理の機能拡張も続きますし、そこから先の世界もまだまだ広がります。各職種募集しておりますので、興味をお持ちになった方はぜひお話しましょう!

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