「カケハシらしさ」を、みんなの羅針盤に。6つのバリューに込めた思い
2019年1月、カケハシは新たに6つのVALUE(バリュー)を定めました。バリューはチームの考え方や優先順位を明確にし、日々の判断や行動の基準となるもの。どんなときでも「カケハシらしさとは?」と常に問い続け、採用においてもカルチャーフィットを何より大切にしてき私たちの思いを言葉にしました。6つの言葉に込められた思いを、経営メンバー3人、そしてバリュー策定の旗振り役を務めたクリエイティブディレクターに聞きました。
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カケハシのカルチャーを言葉にする。バリュー策定プロジェクトの発足
―― そもそも今回のバリュー策定プロジェクトは、どんなきっかけで始まったんですか?
CTO海老原(以下、海老原):
直接のきっかけは、あるメンバーの一言だったと思います。
カケハシは2019年で創業4年目を迎えますが、会社は成長し、メンバーも増え続けています。そんな中で、「カケハシらしさ」の体系化が必要になってきていました。
私はCTOとして開発責任者を務めるとともに、全社的な組織づくりにも積極的に関わり、常に「その考え方や行動はカケハシらしいか? らしくないならどう行動すべきか?」と問いを投げ続けてきました。少人数であれば、何がカケハシらしいのか、そのつど伝え、自分のものにしてもらうまで咀嚼してもらうことができます。しかし、組織規模が大きくなってくると、私が対峙する人の、さらにその先にいる人にまで明確に伝わるようにしなければなりません。
「そのためのアクションが必要なのでは?」と、メンバーから声があがったんです。バリュー策定のプロジェクトをメンバーの提言からスタートできたのは、とても良かったなと思っています。
COO中川(以下、中川):メンバーの行動の判断基準になるものなのに、経営メンバーが「はい、これでお願いします」なんて勝手に決めて、形骸化してしまうようでは意味がありません。カケハシのメンバー一人ひとりがバリューに対して「これが私たちのバリューなんだ」とオーナーシップを持てるものにしたかったんです。
そこで、まずは当時のメンバー全員に、”カケハシらしさはどういうものか”意見を出してもらいました。メンバーがどんなイメージを持っているか把握できたのは、とても価値あることだったと思います。そこからさらに、バリューとして言葉を研ぎ澄ませていくにはどうしたらいいか、考えていきました。
海老原:「みんなの意見をまとめたもの」は、ある種の最大公約数的な、丸められたものになってしまいます。業務をするうえで、あるいは意思決定をしていくうえで、AかBかを選ばなければならないときに、丸くなった意見では指針としてふさわしくありません。ものごとにはたいていメリットとデメリットがあります。何を選び取るかは、ある程度のエゴ、つまり「私たちはこちらを選びます」という明確な意思が必要です。そうした観点から、もう一度、経営メンバーがボールを持ち、徹底的に考えていきました。
クリエイティブディレクター上田(以下、上田):私がプロジェクトに関わり始めたのが、ちょうどそのタイミングです。中川が中心となって作ったドラフトをもとに、いくつかワーディングの案を作ってみたのですが、どうも手応えがない。洗い出した「カケハシらしさ」を整理してドラフトを作った際に、個々の要素が薄まってしまっていたんです。そこで改めて出発点に立ち返り、「カケハシらしさ」を紐解いていきました。その際、指針になったのは「採用面接での目線」です。カケハシの採用はカルチャーフィットを特に重視し、職種を問わず10人近くのメンバーとの面接を必須のプロセスにしています。面接の場で、自分たちが何を見極めようとしているのか。それをまる1日かけて出し切り、言語化することで「カケハシのカルチャー」の輪郭を掴んでいきました。
今のカケハシの良さと、これからなりたい姿を掛け合わせた像がバリューに
CEO中尾(以下、中尾):バリューには、私がなぜカケハシを創業したのかという思いも込められています。
前職の製薬会社でMRだった私は、「何をしたらもっと日本の医療が良い方向に進むんだろう」とずっと考えていました。その結果、現状の延長線上で取り組んでいくよりも、ゼロベースで考え、患者さんがラクに利便性の高い医療を受けられる状態を実現していくべきだと決断して、カケハシを立ち上げたんです。
カケハシは、医療領域において、新幹線のようなインフラになりたいと考えています。インフラになるためには、いちビジネスマン・中尾豊の力だけでは全然足りなくて、たくさんの優秀な人に力を借りなくては成し遂げられません。しかも、既存の慣習にとらわれたり現状維持で満足したりせず、最大限のパフォーマンスとスピードで事業を成長させなければならない。その中で、「患者さんや世の中にとって、本当の意味でポジティブなことが選択できているか」という根本の部分に立ち戻れるような判断基準が必要だと考えていました。
その場の営業的な判断や短期利益ではなく、医療という大きな社会課題に対峙する企業としてとるべき行動は何か? バリューの一つひとつに、大切なことが込められています。
中川:そういう意味でも、メンバーからあがってきた意見から浮かび上がってくる価値観と、プラスアルファで現状の組織に見える課題を見据え、将来なるべき組織の姿を掛け合わせながら、最終的にバリューを決めていきました。今のカケハシで体現できている良さのみならず、今後、私たちがこうなっていきたいんだという意思を込めたものになっています。
海老原:1日集中して一気にバリューの骨格を組み立てたあとは、上田と私が中心になって現在のワードに落とし込んでいきました。言葉の選択にあたっては、本当にこの言葉でいいのか、言いたいことは伝わるか、一語一語、検討を重ねています。
私がカケハシの経営に参画してから、ずっと考えてきた「カケハシのカルチャーとは何か」。この機会に、言うべきことは全部出しました。ふだんはここまで言わないなというぐらいの熱量だったと思います。もちろん全部押し通したという意味ではありません。みんなで突き詰めたおかげで、カケハシのカルチャーをしっかりカタチにできたと思います。
6つのバリュー、それぞれに込めた思い
―― それぞれの項目について、詳しく見ていきましょうか。まず最初に「高潔」ですね。
「高潔」
中川:「高潔」なんていうワードをバリューに掲げている会社なんてまずないと思うんですが(笑)。でもすごくカケハシらしい。私たちが医療という分野に軸足を置く以上、単に収益を得られればいいということには絶対になりません。社会をより良くする、日本の医療をより良くするという高い倫理観と使命を帯びた、会社としての責任感に基づいて事業的な選択をしつづけるという、強い意思表明です。
中尾:これは、医療という大きな課題領域で事業を成長させていくためには、第一に必要なことだと思っています。時にビジネスの場においては、クライアントの要求や時間の制約、営業的判断などさまざまな要因から、「それが患者さんのためになるのか」という本質から離れた論点でものごとが進みそうになってしまうケースが少なくありません。そんなときにも、この「高潔」という言葉が、いつでも本質に立ち戻らせてくれると信じています。
「価値貢献」
上田:成果に貢献ではなく、あえて「価値」という言葉を選びました。成果そのものではなく、成果を出すための動きに対して、自分はどんな価値をもって貢献できるか。そこに重きをおこうという思いです。自分やメンバーの発揮する価値に対して、常に意識的である状態を目指したいと考えています。
「カタチにする」
中川:カケハシの文化として、ものごとを深く考えて本質を問い直そうという姿勢があります。これはカケハシの非常に良い部分だと思っています。一方で、考えることに時間がかかりすぎる、ものごとをカタチにするためのスピード感が弱いという側面もあります。日本の医療を大きく変えていくんだという夢を実現することを考えると、ゴールを設定してそこに到達する動きはまだ弱いところです。短い時間でしっかりと考え、物事を進めていく、やり遂げるというのを強調したいと思いました。
「無知の知」
海老原:どうしても人は、自分の経験の中からつくりあげた認知フレームの中でものごとを受け取ってしまいがちです。新しいメソッドに対しても「これはこの程度にすぎないよね」と過小評価してしまって学びに至らない。そこは自分の中のフレームを取り払って、納得いくところまでちゃんとやり切ってから評価をすべきです。もっともっと、赤ん坊のように吸収したうえで、自分たちなりにブラッシュアップしていくべき。
ふつうにできることをやって、ふつうに右肩上がりに成長する、というのでは、「医療領域におけるインフラになる」という目標には届かないと思っています。飛躍的な成長には離散的なイメージがあり、それを実現するために「無知の知」の姿勢が必要です。
どんなものでも、吸収してすぐ効果が出るわけではなくて、しばらく停滞期があって、何の意味があるのかわからないみたいな期間があってから、急に閉じていた門が開けて「なるほど!」と光がさす瞬間というのがあると思うんです。そういう知的成長のおもしろさを味わえるチームでありたいですね。
「変幻自在」
上田:固定化された役職がなく上下関係もないカケハシでは、状況と場合によって、ときには自分がリーダーシップをもち、ときにはフォロワーシップをもってリーダーを支えるというフレキシブルな動きが求められます。
個人的には、「変幻自在」 で示されているフォロワーシップ、これがすごく大事だと思っています。カケハシは組織がフラットで、プロジェクト単位で流動的に動いていくスタイルをとっているからこそ、フォロワーシップの醸成は意識的にやっていく必要があると思っています。
「情報対称性」
中川:私たちは経営情報なども含め、基本的にすべての情報をメンバー全員で共有するスタンスをとっています。組織がセクショナリズムに陥らずに、チーム同士でコラボレーションしていくには、情報を主体的に発信していくことを良しとしているのです。仮にショッキングなメッセージであったとしても、私たちはそれを発信することを選択し、メンバーもそれを正しく受け取ってくれると考えます。すべての情報をオープンにすることにはリスクも伴いますが、それでも情報を出していくことを選択するんだと、その意思をバリューで表明しています。
バリューをカケハシの文化として根づかせるために
海老原:バリューができたことで、採用基準に関しても、曖昧さが払拭されたように思います。選考時に6つのバリューにフィットするかどうかという基準で見ることができるようになりました。
中川:社内でも、特に「カタチにする」という面について、動きが変わった実感があります。ものごとが、どんどん前に進むようになってきていますね。
バリュー発表後にすぐSlackでバリューの絵文字がつくられ、みんな「価値貢献」とか「無知の知」とかよく使っています。「ラーメン食べたよ」という投稿に「高潔」が押されていて。何が高潔なのかまったくわかりませんが(笑)、みんながバリューを気に入ってくれているのは伝わってきますね。
次のステップとしては、一つひとつのバリューに含まれている深い意味合いをきちんと感じ取って、個々人がそれを実践していけるような状態にしていくこと。経営メンバー自身も、バリューをすべて体現できているわけでは決してないので、自分たちも含めての課題です。
中尾:バリューができたことで、メンバーそれぞれが、自分の仕事の意味や選択をより意識的に捉えられるようになったのでは。良い動きになってきているという肌感はありますが、カケハシの文化としてさらに浸透させていかなければ、という課題も感じています。
海老原:私と上田がバリューの言葉をかなり細部まで詰めてきましたし、自分の中に、それぞれのバリューについて明確なステートメントがあります。これからメンバーがバリューを行動に落とし込んでいけるように、そのステートメントを文章にしていくことを考えています。例えばこういうときはこういうふうに考えるのがある種の「高潔さ」 ですよねとか、「変幻自在」 である人なら、こういう場合はこういうふうに意思決定や行動をするでしょうといったところをブレイクダウンしていく必要があるのかなと思います。
上田:バリュー浸透のための施策としては、海老原がもっているステートメントも盛り込んだバリューブックの作成やワークショップの開催を考えています。
バリューの策定はあくまで出発点。行動指針は会社のフェーズや世の中の情勢にも影響を受けて、常に変化や進化をしていくものだと思います。浸透させるための施策にも終わりはありません。バリューブックの更新をしたり、経営メンバーが意識して発信していくようにしたり、全社ミーティングをしたり、いろいろな方向から積み重ねて、バリューをカケハシの文化に育てていこうと考えています。
中尾:私たち経営メンバーとしては、まだまだ発信が足りていないという反省もあります。バリューが何を意味していて、カケハシはこういう働きかたや行動を評価したいと考えているんだと継続的に伝えていって、文化を形成していきたい。バリューがメンバーみんなの骨の髄まで入っていくような発信をこれからいっそう活発にしていきます。私たちの「日本の医療を変えていく」夢を実現するために、バリューをしっかりと活きたものにしていきたいですね。