ユーザーコミュニティ「MusuViva!」から生まれたのは薬剤師の“気持ち”と“行動”の変容でした
Musubiユーザー薬局・薬剤師さん向けのオンラインコミュニティ「MusuViva!」の運営を担当している伊藤です。
この夏、「MusuViva!」がおかげさまで2周年を迎えました。嬉しいことに、座談会やワークショップなどの企画には毎回多くの方にご参加いただいており、またユーザー薬局さん同士のコラボレーションや薬局・薬剤師さんの行動に“変化”が生まれた事例も出てきています。
今回は、そのなかから特に「MusuViva!」らしい成果を5つ、もう一人の担当・仁志田と一緒にご紹介します。ユーザー同士のつながりから生まれる、医療の現場の新たな変化を、リアルに感じてもらえると嬉しいです。
1 . ユーザー伴走型プログラムをきっかけに、トレーシングレポートによる医薬連携が進展
まずご紹介するのは、2022年5月に実施した「薬局カイゼン4週間チャレンジ」という取り組み。これは、トレーシングレポート件数向上を目指して行ったもので、フルタイズ株式会社・北代さん、会喜地域薬局グループ・橋本さん、有限会社府中ファーマシー・林さん、他2名の方にご参加いただきました。
ご自身や薬局としてのお悩みを棚卸ししたのち、具体的なトライ目標を決め、実践や改善を重ねていく流れをとった本取り組み。そのなかで印象的だったのは、参加者同士の対話が数多く見られ、お互いに切磋琢磨しながらトレーシングレポート件数の向上を目指してチャレンジを続けられていた姿勢です。
たとえば、参加者のなかでもひときわトレーシングレポート件数の多かった北代さんは、トレーシングレポートの書き方やその内容・文量、医師への提出方法など、周囲から挙がったこまかな疑問に対して鮮やかに回答してくださいました。
さらに「トレーシングレポートは医師へのお手紙」「トレーシングレポートを出してもいいのか気になるなら、直接医師に確認してみたらいい」「残薬調整でも、患者さんの役に立つならトレーシングレポートにしたほうがいい」といった金言も目白押し。参加者のマインドセットが大きく変わるきっかけをつくってくださいました。
門前の病院の先生にトレーシングレポート提出の許可取りに向かったところ、「どんどん持ってきて!」とおっしゃってくださるアツい医師だと判明。トレーシングレポートを通じた医薬連携が進むようになった!(橋本さん)
トレーシングレポートの提出について抵抗なく患者さんに承諾がとれるようになっただけでなく、他の薬剤師スタッフにも提出の意識が芽生え始めた!(林さん)
その結果として、参加者のみなさんの意識とともに行動が変わり、それに紐づく形で大きな成果も得られました。発端は「MusuViva!」で企画したワークショップでしたが、自走された薬剤師のみなさんの心意気や達成を目指す強い意志、お互いに支え合う場としての朗らかさに心温まる事例でした。
2 . オープンな情報共有で、薬剤師の新たなミッション「患者フォロー」のノウハウが蓄積
2022年11月、ワカバ株式会社・水越さんと、株式会社ドラッグしみず・國本さんの2名を招いたフォローアップ共有会を開催しました。
水越さんも1つ目の事例「4週間チャレンジ」の別の回に参加されたことで、フォローアップ件数を月5件から月40〜60件(1店舗あたり)へと大幅に増やすなど、格段に成長させた経験を余すところなくご発表くださいました。
一方、國本さんは「Pocket Musubi」「Musubi Insight」の活用により、服薬期間中だけではなく、離脱された患者さんまで、幅広くフォローアップを実施されています。
水越さんと國本さんからの事例に強く影響を受けたのは、共有会に参加していたなかいまち薬局・土橋さん。
國本さんが実施されていた、患者さんに対するフォローアップアンケートを通したオペレーション構築の話から気づきを得て、「自分の薬局でもチャレンジできるかも!」と前向きな気持ちを持てたそうです。
また、共有会の途中で、水越さんが発言された、
「フォローアップの事例はまだ少ないので、失敗すること自体にマイナスは存在しない。けれど、時が経てば経つほど周囲の薬局もフォローアップを行うようになるので比較されてしまう。比較対象のない今だからこそチャンスをまだまだ得られるのだから、今こそ始めるタイミング」
という言葉にも背中を押され、店舗全体に改めて意義を伝え、全員でフォローアップを行うようになりました。
3 . 患者さんへのLINEお友だち登録をどう案内するべきか……先輩ユーザーが貴重なテクニックを公開
先ほどの事例「フォローアップ共有会」で刺激を受け、患者さんとの関係性構築に取り組むようになった、なかいまち薬局・土橋さん。なんとその後、2023年4月に開催した「Pocket Musubiお友だち登録事例共有会」で登壇者として取り組みをご紹介してくださいました。
患者さんのより良い治療・生活のためには、お薬にまつわる問題を早期発見し解決につなげる必要があります。そのためには、日頃から薬剤師さんがフォローアップできる状況を作ることがなによりも重要です。
その一手として高い効果を発揮するのが、LINEのお友だち登録によって薬局と患者さんとの接点を作ること。
そんな背景もあり、この共有会はコミュニティ内で開催したイベントのなかでも過去最大の参加者数にのぼりました。それだけ、「患者さんへフォローアップを行いたい!」「コミュニケーションを活性化したい!」と考えている薬剤師さんが多いことが伺えます。
土橋さんは、Pocket Musubiを突如推進することになった戸惑いや、声掛けへの心理的負担感などを赤裸々に吐露。
「ご一緒にポテトはいかがですか?」という比喩は、参加者からの共感を集めていました。先程の國本さんの事例から取り入れた、「問診票にお友だち登録に向けた一言を追加する」というアイデアで、コストやリスクを低減しながら登録数を増やすことに成功。
具体的には、停滞していた登録数を2ヶ月間で100人増やすことができました。自店舗にとって無理なく続けられる方法を見つけることの大切さを、ご自身の体験談から語ってくださっています。
また、もう1人の登壇者である福元薬局・石塚さんは、グループ内の薬局同士で行ったワークショップで、フォローアップの意義や先行店舗の活用事例、目標設定などを共有しながら登録の促進を実践したのだそう。店舗によっては、目標の3倍以上の登録者数を獲得していました。
具体的な取り組み方について学びが多数あったことはもちろんですが、彼らのマインドセットや姿勢が参加者に響いた場面も。「忙しいことは理由にならない」という石塚さんの一言で背筋が伸びたという方もいらっしゃいました。
有意義な時間となり、なんとイベント実施後アンケートでは満足度100%(「大変満足」が85%、「やや満足」が15%)という凄まじい結果を残しています。
そして、このイベントを通してモチベーションを高めた参加者の1人、株式会社YHO・エリアマネージャーの狩野さんはその後、コミュニティ内で開催された取り組み「Pocket Musubiチャレンジ」に参加。
土橋さんと石塚さんという先輩ユーザーさんから直接のアドバイスもあり、お友だち登録数を321名から577名へ増加させるほか、スタッフ同士が自然とフォローアップに取り組むようになったことで、現場で「ありがとうね」の声がかけ合える空気感を作れているとか。
数字としての成果だけではなく、法人全体で「Pocket Musubi」の活用イメージを持っていただく機会となり、新しい発見も生まれていました。
これまでご紹介した3つの事例の共通点は、先輩ユーザーさんの声を聞くことで、これから一歩を踏み出したいと考えている薬剤師さんの意識が変わるという循環が生まれ続けていること。
以前はイベントを聴講しているだけだった薬剤師さんが、次回はイベントの登壇者に……という流れが生まれているのがなによりの証です。
地道な取り組みの様子を赤裸々にお話してくださったり、具体的なお悩みや困りごとへのフォローをコミュニティ内で行えているからこそ、挑戦のきっかけ作りはもちろんその経験をシェアする文化が生まれているのだと思います。
4 . ユーザー同士の情報交換で、薬局の“物販”の問題が解決
ここからは、少し新しい視点での取り組みをご紹介します。「MusuViva!」はプロダクト活用についての対話が多く生まれる場所ではありますが、それ以外にも薬局経営についての情報交換を行う場としても活用されています。
そのなかで先日生まれた話題の1つが「薬局の物販・OTCってどうしている?」というもの。どんな商品を取り扱っているのか、何が売れ筋なのか、陳列の工夫などを対話しています。すると、とあるユーザーさんから「ロングライフパン」なるものの存在をご紹介いただいたのです。
そんなロングライフパンの取り扱いを行っていた薬局さんが「仕入れ先の都合で扱えなくなってしまった……!」とお悩みを吐露したところ、すぐさまほかのユーザーさんが仕入れ情報をシェアしてくださったのです。
こんなやりとりを見ていた他のユーザーさんが、真似して仕入れたり、売れ行きを報告したりするなど対話が生まれていきました。
コミュニティ内でのコミュニケーション促進となったのはもちろんのこと、保険外収入の観点で経営向上に寄与できたり、患者さんとの対話を生み出すきっかけにつながったケースもありました。
日頃の服薬指導だけではない会話を引き出すことで、患者さんが日頃から抱えている課題や、健康アドバイス提供の一助にもなっている事例としてご紹介しました。
5 . コミュニティでの交流をきっかけに、薬局の垣根をこえた人材交流の仕組みが誕生
最後にご紹介するのは、ユーザー3社による業務提携事例「マワレ」。入社1〜3年の若手薬剤師を対象に、在籍型出向の形態でOJTやプロジェクト型研修を実施する取り組みです。
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自社の薬局のみでは体験できない環境で研修を行うことで、豊富な経験や広い視野を持つ薬剤師の育成が目的。また、新卒薬剤師募集のアピールポイントにすることで、採用に課題を抱える地域の人材確保にもつなげようと考えていらっしゃるそうです。
実はこの取り組みを先導する、さど調剤グループ・光谷さん、株式会社メタルファーマシー・川野さん、会喜地域薬局グループ・馬場さんは「MusuViva!」のコアメンバーとしても積極的に活動してくださっている方々。
元々知り合い同士の3人が、「MusuViva!」を通して、お互いの人柄や志を更に深く知り、信頼できる仲間となって「マワレ」に繋がっていきました。
新たなコラボレーションや先進的な取り組みのきっかけとして、ささやかながらも「MusuViva!」が貢献できたことが嬉しく、また誇らしく感じられた事例でした。
ともに考えともに創る、薬局のあした。をこれからも
いかがでしたでしょうか? 最後に私と仁志田から、「MusuViva!」を盛り上げてくださっている参加薬局・薬剤師の方々への感謝の気持ちをお伝えし、結びとさせてください。
伊藤:
「MusuViva!」の2周年、とても良い状態で迎えることができたなと感じています。全国のユーザーさんが積極的に参加してくださり、お互いの顔や人柄を知り、興味関心を持ってコミュニケーションを取る機会がずいぶんと増えているからです。
また、カケハシ社内にも「MusuViva!」の存在がだいぶ浸透したな、と思います。「Pocket Musubiチャレンジ」のような、他チームとのコラボレーションによる取り組みや成果も少しずつ作ることができました。
素敵なユーザーさんが「MusuViva!」を通してより一層輝くことができる、そして、それを社内全体で応援できるという動きが垣間見えていることを嬉しく思っています。
今後、3周年に向けては、ユーザーさん同士の共創事例を増やせるよう取り組んでいきたいと考えています。私たちからのみならず、ユーザーさんからの「やりたい!」をカタチにして、コミュニティとして発展させていければと思っています。
これからも「MusuViva!」がさらなる熱狂を生み出す場所であり続けられるように頑張っていきますので、引き続きよろしくお願いいたします!
仁志田:
僕が「MusuViva!」の運営に本格的に関わることになってから早1年。たった1年間ですが、本当にたくさんのユーザーさんにご参加いただく場所になりましたし、どんどんと才のあるユーザーさんに登場いただいている感覚があり、とても誇らしい気持ちで見守っています。
薬局業界では、医薬流通の課題をはじめとしたネガティブな話題を耳にすることも少なくありません。そんななかでユーザーさん同士が切磋琢磨しながら「自分の薬局をこうしたい」と語ってくださる今の状況は素晴らしいことですし、それを後押しできる「MusuViva!」でありたいとも思っています。
今後も「MusuViva!」は多くの方に参画いただいたり、さまざまな情報が行き交う場所になると思います。だからこそ、いろいろな方をフィーチャーしながら盛り上げていきたいです!
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3年目の「MusuViva!」も引き続き愛される場所になれるよう頑張ってまいりますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします!
こちらの記事でも「MusuViva!」の様子をご紹介しています!