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今あえて伝えたい、カケハシの技術経営に“足りない”もの

最初のプロダクト「Musubi」の開発・運用からスタートしたカケハシの技術組織も、今では複数のプロダクトを20チームで分担する大所帯となり、大きな過渡期を迎えています。

今回はこの先に見据えている技術組織の新体制と、その実現に不可欠な新たなリーダー像について、CTO海老原CEO中川に語ってもらうことにしました。カケハシの技術経営に“足りない”ピースとは何なのか? なかなか言葉にしづらい部分ではありますが、エンジニアリングチームの組織開発を担当している今井が聞き手となり、掘り下げていきます。

左から、聞き手の今井と、ニコニコな中川、海老原。

エンジニアリング組織の現在と、メンバーに求められる役割

今井 昨年末のアドベントカレンダーの時点では技術部門の階層化がテーマになっていましたよね。それから半年がたち、組織規模はさらに大きくなりました。

海老原 技術部門だけで約150人、チーム数は20チームほど。1〜2人のユニットもあれば複数のスクラムチームのあるプロダクトグループもあり、規模もミッションもさまざまです。
カケハシのエンジニアリング組織は、プロダクトとプロダクトを横断するファンクションごとにチームを分類しているのですが、Musubi、Pocket Musubi、Musubi Insight、Musubi AI在庫管理という4つの既存プロダクトに加え、新規プロダクトの立ち上げも複数ひかえていて。さらに各プロダクトの基盤となるプラットフォーム開発やデータ活用の推進といった横断的なミッションもあるという……なかなか大きな規模になってきましたね。

今井 一般的に、組織が拡大するにつれてメンバーに求められる役割は「広く何でも」から「特定領域のスペシャリティ」に移っていくものかなと思うんですが、カケハシもそう?

海老原 担当プロダクトによるんですが、たしかに少しずつスペシャリストを求める傾向は強くなっていると思います。もちろんジョブディスクリプションが明確になったことや、採用プロセスの変化が影響している部分もあるし、小規模なユニットや新規プロダクトの担当だったりマネジメントを担ったりする場合には「状況にあわせてなんでもやる」がミッションになることも普通にありますけどね。

中川 プロダクトの数はカケハシの一つの特徴ですよね。もともと Musubi というプロダクトを軸に組織づくりしてきたわけですけど、Pocket Musubi、Musubi Insight、Musubi AI在庫管理、とプロダクトが増えていくにつれて、求められるスペシャリティも、それを担うメンバーもどんどん増えていって。さらにプロダクトの成熟度が上がっていくにつれて、そのプロダクトが向き合うべきテーマも増えていくわけで。

創業プロダクトのMusubiは、今やプロダクトマネージャー3人体制でまわしています。それぞれ異なるスペシャリティをもつ3人が役割分担しながら、全体でプロダクトマネジメントトライアングルを埋めていますね。

これからのカケハシに必要なCTO、技術リーダーとは?

中川 カケハシ全体としてはプロダクト単体としての価値創出だけでなく、複数のプロダクトの連携・連動による新たな価値をデザインしていくことがより重要になってきています。

海老原 そうですね。特定の領域でそれぞれスペシャリティをもつ人たちが集まり、全体最適の視点で価値創造・課題解決をしていくことが求められるようになっています。

中川 マルチプロダクト環境だからこそ、プロダクトを横断した“世界観”がより大事になっていますよね。カケハシ全体として、社会・医療におけるどんな課題を、どのような技術を用いて解決していくのか。その世界観を強めていくためにも、各プロダクトや技術分野を横断的にマネジメントできるように、技術組織の体制をアップデートしていかなくては。

海老原 とはいえ、やはり規模拡大に伴う組織マネジメント上の課題は大きく、特にここ数年は自分としてもそこに向き合わざるを得ないのが実情でした。一方で、経営に大きなインパクトをもたらしうる技術イシューというのも一気に増えてきています。コンパウンドスタートアップとしての事業展開を支えるアーキテクチャとは?とか、計画的な技術負債の返済ってどうする?とか、新しい要素技術への投資判断どうする?とか……組織と技術それぞれの課題解決をどう両立するかは非常に悩ましいところです。

中川 一人で抱えるのはぶっちゃけ無理ゲーですよね……。

今井 経営メンバーのなかで技術バックグラウンドが海老原さんだけなのも気になります。

中川 まさに。技術組織の課題には引き続き海老原さんが中心となって向き合っていくとして、事業戦略を踏まえた技術戦略という軸でリーダーシップを発揮してくれる存在が必要だねと話しています。

海老原 それこそが、これからのカケハシにおけるCTOのミッションになると思います。経営レベルでの技術アジェンダの促進・解決を担い、3年〜5年〜10年後を見据えて技術的な打ち手を考えていく役割です。

それが海老原の仕事でしょ?と言われるとその通りなんですが、CTOとしてこの7年間、特に直近の3〜4年は組織としての成長にほぼすべてを注ぎ込んできて。状況に応じた判断の結果ではありますが、技術的なリーダーシップはどうしても後回しにならざるを得なかったんです。

自分としては、もちろんここから技術に比重を移していく構えはありますが、そのためにカケハシの歩みが遅れてしまう可能性があるのであれば違うよなと。ここまでの流れや自分の強みを踏まえても、CTOとして技術面をリードする役割はより得意な方にお願いして、僕自身はエンジニアリングチームの組織化に責任をもつシニアVPoEのような立場から、今まで以上にカケハシの土台を支えていくことができればベストだと考えています。

技術面のリード役としてのCTOを引き継ぎ、海老原はよりエンジニアリングチームの組織化に集中する立場へ。

加えて、今後のカケハシにとってますます重要になってくるのがデータ基盤です。大規模な“生きた臨床データ”をどう活用して、日本における Value based Healthcare の足がかりとするのか。この領域をCTOが担うのかまた別のリーダーが必要となるのかはまだわかりませんが、少なくともデータ基盤を専任で見ることのできる経営メンバーの可能性も考えています。

さらに、扱うデータの特性上、情報セキュリティの重要性を看過することはできません。厚生労働省が「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を掲げるなど、業界全体の情報セキュリティ意識も高まっています。社内ITの観点はもちろん、各プロダクトにおけるセキュリティにも責任をもつ 「CIO」「CISO」のような役割も必要になるはず。

社内に目を向けると、マルチプロダクト環境で社内の業務プロセスが複雑化するなど、“カケハシ自身のDX”という課題もあります。顕在的・潜在的な課題を解決するさまざまなIT投資を検討し、判断することのできるリーダーも必要になってくるでしょう。

それぞれのリーダーシップのもとで「プロダクトを横断した世界観」を実現していく、というのが、いま目指すべき技術組織のあり方だと考えています。

今井 複数の技術リーダーがチームで経営に携わるイメージですね。技術リーダー陣の一体感が重要になりそうです。

海老原 そのとおりだと思います。 ひとつのチームとなって活動していくためにはそれぞれをつなぐ“糊”のような存在が必要で、そこは自分が担うことになるのかなとは考えています。経営の一員として全社の戦略を踏まえた上で、それぞれが専門性を活かして技術的な戦略を考えていくのが、チームとしての技術経営なのではないかな。

技術経営を促進する、一歩先の経営チームとは?

中川 経営という視点でいえば、プロダクトやテクノロジー的な発想を今以上に経営の起点にしていきたいという思いは強いです。経営として、新しい技術にどれだけスピーディに反応できるか。たとえば「ChatGPT」が出てきたよというとき、「サポートデスクに組み込めない?」みたいな議論がすぐにでも立ち上がるようになるともっと面白くなるはず。そういうことが経営レベルから率先して議論され、実際にやってみる姿勢こそがテックスタートアップらしさだと思うし、カケハシの経営ももっとそうしていきたいなと思っています。

カケハシはあくまでテックスタートアップであり続けるんだ、というのは常日頃から中川が口にする言葉。

経営陣で技術畑が海老原さん一人という話もありましたけど、経営体制に対するカケハシの考え方は同質性じゃなくあくまで多様性重視なんです。医療業界の特性上いわゆる“イケてるプロダクトで世の中をひっくり返す”的な世界ではないということもあり、現状、事業サイドの層が厚くなっているにすぎないと思っています。

医療の世界も、新たなテクノロジーによって従来の常識や前提が一気に変わりつつあります。それだけに、“技術を起点にイノベーションを起こしていく”という発想をもっともっと強めていきたい。そのために経営チームの布陣はどうあるべきなのかも大きなテーマの一つですね。

今井 経営メンバーが増えることでスタートアップならではのスピード感や大胆さが失われてしまいませんか? 極論、一人がすべてをみていればコミュニケーションコストも低いし、チーム間の垣根も生まれませんよね。

海老原 ある程度の組織規模までなら、そういうこともあり得るんですかね。ただ、今のカケハシにとってはボトルネックになることのほうが多いと感じています。一人のリーダーが管掌できる範囲にも限界はありますから、経営体制の拡大とある程度の役割の細分化は必要なプロセスだし、その上で組織の縦割り化を防ぎ、コミュニケーションコストを最小にするチャレンジが必要なんだと思います。組織のサイロ化には徹底して"NO"を突きつけながらも、各リーダーが自身の担当領域におけるたしかな裁量をもって、高い機動力でチャレンジしつづけることなのかなと。

特に技術に関しては、一人ですべてを見るには広すぎると痛感しています。組織のアジリティとリスクマネジメントの両立が極めて難しい。だからこそ、ある程度の分散はなされるべきだと思います。適切な裁量をもって自治されているチーム同士が高度に連携している状態こそ “ガバナンスとチャレンジが両立した組織” だと思うし、その理想に少しずつでも近づけていかなければと思っています。

今井 その経営チームにふさわしい、技術リーダーとは?

海老原 「未来のための投資」について考えられる人だと思います。ここでいう未来とは、カケハシの未来であると同時に、社会全体の未来です。昔からの持論なんですが、企業経営、特にスタートアップの経営に携わる以上、その人には「人類史や社会の大きな流れのなかで、その事業が何をもたらすのか」という次元で物事を考え、同時にそれを「どういう投資をすれば事業を最大化できるのか」という現実的なビジネスのロジックに落とし込んでいくことが問われていると思うんです。

中川 自身の役割を固定化することなく、事業のフェーズや状況に応じて自身の貢献の仕方をチューニングできるかどうかも重要なポイントですよね。

海老原 まさに、カケハシのバリューの一つである「変幻自在」ですね。ミッション・ビジョンはもちろんバリューへの絶対的な共感は大前提ですが、つきぬけた技術力のある人こそむしろ謙虚さを持ちあわせているものだと思うので、カケハシのバリュー、特に「高潔」や「無知の知」を大切な価値観として掲げていることには、きっと共感していただけるんじゃないかと思います。

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いかがでしたでしょうか。今回は以上ですが、今後も引き続き、こちらのnoteや KAKEHASHI Tech blog、さまざまなイベント等で“カケハシが目指すエンジニアリング組織”の情報をお届けしていきますのでお楽しみに。

そして最後に、イベントのお知らせです!

CTO海老原が自ら明かす「カケハシ組織構造の再構築」と「VPoE採用の葛藤」

2023年6月14日(水)15時30分より、日本CTO協会のオンラインイベント「Developer eXperience Day」にCTO海老原と新VPoEの湯前慶大(@yunon_phys)が登壇します!

エンジニア組織におけるマネジメント体制の再構築をテーマに、VPoEを採用する際の経営層の葛藤や組織構造の変化など実例を交えてお話する予定です。詳細・お申し込みはこちらから。ぜひご覧ください!


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